「子供の書いた読書感想文を読むと「よかった」「おもしろかった」を繰り返し書いているだけ」
これは読書感想文を書く上で保護者様より多くお聞きする相談内容です。
お子様が表現する「よかった」、「おもしろかった」は何を意味するのでしょうか。

絵、本、写真など芸術を楽しむ上で2種類の見方があるとされています。
1つは「感性」、2つ目は「理性」によるアプローチです。感性アプローチは作品から得られる印象や情感を理由もなく受け取る接し方であり、一方、理性アプローチは知識、情報から論理的に思考する分析的な接し方です。例えば、美術館にて絵画を鑑賞しているとします。多くの作品が並んでいる中で、なぜか惹きつけられ立ち止まってしまう作品があるのではないでしょうか。その時、主に働いているのが感性です。そこからより知ろうとする思考は主に理性アプローチを利用していると言えるでしょう。

ここで、子供達が表現する「おもしろかった」はどちらのアプローチに近いのでしょうか。それは感性アプローチの1つの表現となります。つまり、言葉としては「おもしろかった」という表現ですが、子供たちの感情、思いには私たちが想像出来ない「おもしろい」が十分に描かれているのです。そして、感性アプローチがもたらす最も大切なものは内発性です。つまり、「おもしろい」という表現は内発性を生み出す種が植えられたと同じことなのです。その種を継続して育てるのが理性アプローチです。大人になると理性が養われているためとかく理性アプローチの表現、思考を評価しがちですが、まず必要になるのは内発性の種なのです。先ほど述べた絵画鑑賞の例では感性アプローチが働き、自らを絵の前に立ち止まらせました。そうです、内発性のきっかけを作っているのはやはり感性が主なのです。ぜひ、子供達に内発性の種が植えられていることを評価して下さい。理性アプローチはパソコンも実施することが出来ると考えると「おもしろい」という表現の重要性が分かります。私たちが想像する以上に子供達は多くを感じ、描き、個性を創り出しているのです。

しかし、注意すべき点もあります。ただ流し読みし、感性を通らず表現された「おもしろい」を見分けなければなりません。見分けるポイントは次の本を読もうとするかという態度です。小学校中学年までは感想文の内容ではなく、何回、感想文を書くかが重要になります。理性アプローチの指導は小学校高学年からでも遅くなく、その後、おのずと感想文に深みは出てくるのです。