「『せりふ』にたよらず書いてみよう」は、しっかりとした書き言葉を身に着けるためのトレーニングができる教材です。
会話文のやりとりのみで描かれた場面を、会話文を全く使わない表現で構成し直すという取り組みが集まっています。
文章表現には、発言内容をそのまま引用して文章を組み立てる直接話法と、発言内容を要約して文章を組み込む間接話法の二種類があります。直接話法とは、たとえば「太郎は『昨日はありがとう、助かったよ』と次郎に言った。」などの表現であり、それに対して間接話法は「太郎は、昨日次郎に助けてもらったことへの感謝を述べた。」といった表現です。
子どもたちの作文が未熟でつたなく見えてしまうとき、その原因が、この前者(直接話法)に頼りきってしまっているせいであるケースが多々あります。人物の台詞をベースにしてものごとを言い表そうとするため、客観的な状況が読み取りにくい文章になってしまうのです。間接話法を適切に織り込み、出来事を簡潔にまとめた描写をできるようにすることが、作文上達の道なのです。
この「『せりふ』にたよらず書いてみよう」という教材は、その間接話法を習得することを主なねらいにしています。会話文を使わないで表現する機会を重ねることにより、間接話法を使いこなせるようになることを目指します。
取り組みの効果を最大限にするために、〈会話文になり得ない表現〉をつくるよう子どもたちを促していくことが、この教材の使用のポイントになります。
たとえば「ビンのふたを開けてと頼んだ。」という表現は、かぎ括弧こそ入っていないものの、「ビンのふたを開けて」の部分は、かぎ括弧でくくってしまえば会話文になります。このような会話文になり得る表現で良しとしてしまうと、取り組みの効果は不十分になってしまいます。「ビンのふたを開けるよう頼んだ。」など、かぎ括弧でくくることができない表現を追求させることで、より厳密なかたちで間接話法を習得する契機を提供することができるでしょう。
〈会話文になり得ない表現〉は、お子様向けに〈「 」でくくりようがない言葉づかい〉という文言にしています。
本教材は取り組みの性質上、模範解答というものは存在しません。場面を忠実に描写できているか、会話文になり得ない表現を追求しているか、文法的に問題の無い文になっているかといったことを評価するだけでよく、「こういうものを書かなくてはならない」といった規範はありません。
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