こくごネットでは二つの要素を繋ぎ合わせ新たな発見を見出す融合力を鍛えます。今回の生徒さんは「本との出会い」と「受験」を融合することに試みました。二つの間にどの様な繋がりを見出し融合されたでしょうか。ぜひご覧ください。
人とのつながりはなぜ重要なのか
〜「本との出会い」と「受験」を通して〜
この春、高校生になり、経験した受験の辛さや反省点、経験してよかったところなどについて思い返してみた。すると、以前読んだバッテリー、一瞬の風になれ、DIVE!、銀河のワールドカップといったスポーツがテーマの小説を読んだ際と似たものを感じた。そして、本ではライバルなどの影響を受け成長する人物が多くいたことから、人の成長に人間関係はどれくらい影響を及ぼしているのか疑問に感じた。
まず、人は一人で成長することができるのか考えた。確かに、自分が本当に好きなことなど、苦を感じにくい場合は一人で成長することも出来る。同時に、本気度が高くても少しでも苦を感じる事があれば怠けてしまう人のほうが多い。どんなことであっても一人で成長することが出来る人がごく一部いるのは事実だが、基本的には目標まで一人で成長し続けることは非常に難しいと言える。また、勉強に関して成長することは特に難しいだろう。
意識的に好きを作ることができるなら効率的な成長が可能になるのではないだろうか。残念ながらそれは難しい。なぜなら感情自体をコントロールし、好きを作ることは不可能であるからだ。ならば、好きが生まれる確率が上がる環境を作る方法を考えた方が良い。では、好きが生まれる確率が上がる環境とはどのようなものだろう。私自身、元々好きではなかった読書を、スポーツ小説を読むことを通じて楽しめるようになったという経験がある。その経験を元に、好きが生まれる環境には、時間の長さと体験の質という2つの要素が重要だと考える。また、好きの対象が変わってもこの2つの要素が好きという感情に大きく関わっていることは変わらないだろう。ならば1年という長い時間をかけた受験勉強を好きになれなかった要因は体験の質にあるのだろうか。
長い時間をかけたが、受験勉強を好きになれなかった要因として、体験の質が低かったと考えることができる。ここで、体験の質は何で決まるのか考えてみた。それは、楽しさと興味深さからできている。楽しさとは、体を動かすことや五感などによって体感的に感じることである。そして興味深さとは、体感した事や得た情報を頭で考え思考的に感じることである。またそのような体感・思考は人、組織、活動といった好きの対象から感じている。
受験には楽しさや興味深さをもたらすものはなかったのだろうか。受験勉強では基本的に、先生の話を聞くことと、問題を解くことの繰り返しである。体を動かすことのない受験勉強では、楽しさを感じられるポイントがあまりない。思考においても、問題を解くための考え方がパターン化してしまうなど、能動的な思考が少なくなるため興味深さにはあまり繋がらない。このような、体感的・思考的に変化のない受験勉強では、好きという感情は生まれにくい。
受験を成功させるためにも、人との関わり合いを通して好きを生み出す、または好きを深めることはできないのだろうか。既に好きである場合とそうでない場合の両方について考えた。既に好きである場合、人と関わることは好きを志に変えるためのきっかけとすることができる。好きと志の違いとして、好きでは、行動の目的は楽しむことだったのが志では他者に認めてもらうことが目的となっている。そして他者に認めてもらう過程での競争や刺激が成長につながる。だからこそ、人と関わることは、ただ好きだった状態から、行動の原動力である目標を持った状態へと変わるきっかけになる。例えば、私が読んだスポーツ小説では、同じ志を持つ人が仲間やライバルとなり、心の底から話し合うことやお互いに切磋琢磨し合うことで1人のときよりも早い成長へとつながっていた。このように、同じ志を持つ人と関わることは、さらに大きな成長や1人の時よりも早い成長をもたらす。
まだ好きではない場合でも、人と関わることで新たな見方を知れ、楽しさを見出す事ができる。また、人と関われば、その人の好きなものを知ることで多くの質の高い体験に出会う事ができ、好きなことを見つけるチャンスが大幅に増えるだろう。つまり,受験勉強を好きになるための一番の近道とは、学校や塾で同じ志を持つ友人を作り互いに高め合う事である。
そして、勉強を好きになるという目的がなかったとしても、人と関わることは今までの日々に変化をもたらし、自身を大きく成長させてくれることには変わりないだろう。
高校1年男子生徒