2016年開校以来、今年で10周年を迎えることができました。多くの保護者様に指導の機会を頂き、多くの生徒さんが指導に向き合ってくださいました。支えてくださったことに感謝しております。ここで、子ども達と言葉を介して向き合い続け、見出した確信を3つ共有します。私は脳科学者でもなく、日本語指導の資格がある訳でもありません。あくまで現場での実践と模索を根拠とした内容であることをご理解願います。
1.言語能力は「発信までの貫徹」により成長する
言葉との向かい方には大きく三つに分けられるでしょう。受信、思考、発信です。受信は目、耳、手を用いて読む、思考は情報を編集し考えを作り上げる、発信は手または口を用いて文として他者が捉えられるように外に出す行為と言い換えられます。
開校以来、受信から発信まで首尾一貫して寄り添うことにこだわり指導を実施してきました。「発信までの貫徹」を経た生徒さんは確実に言語能力の成長を観察できます。あくまで国語のテストで満点を取れるようになると確約しているわけではありません。少なくとも初期能力と比較した成長を得ることができます。
国語の読解問題対策だけに焦点を当て、効率的に受信し、正確に決められた解答に辿り着くだけの技術を身につける指導も行えます。それも、指導しています。しかし、それだけでは与えることで他者に循環する広い適用範囲に寄与する言語能力の成長を期待することは出来ません。
2.言語能力トレーニングは筋力トレーニング
腰痛対策としての体幹の筋力強化、なぜか胸筋を大きくする二種類の筋力トレーニングを行っています。ある一定のしきい値を超えると外見の変化、他の部位の痛みの解消といった効果を認識できるようになります。生徒さんの作文の取り組み、作文内容の変化を観察すると筋力トレーニングと類似した変化に気づきました。最初は一文を書くことすら難しさを覚えていたとしても、あるしきい値を越えると明確に言語能力の変化を観察できるようになります。文を出力する速さ、文の整い方の変化、伴走から自走へ移行という形で観察できるようになります。
両トレーニングに共通している取り組み方があります。それは「反復」と「継続」です。つまり、言語能力を上げるとはいかに反復させ、継続させられるかという課題と向き合うかとも言い換えられます。低学年の生徒さんは楽しい、面白いといった感情が伴わなければ飽きゆえに反復作業を行ってくれず、継続させることが難しくなります。高学年の生徒さんになると新たな学び成長の実感を与えないと授業への低評価ゆえに継続が困難になります。
ゆえに反復と継続を成し遂げるための枠組み作りと授業の質の研鑽を求め続けられることとなります。授業の質とは課題内容だけでなく講師の個性、人間性、コミニュケーション能力の成長も含まれます。そこが差別化を生み出すチャンスとも言えるでしょう。
3.人と向き合い学ぶ価値はある
AIの台頭により人と向き合わずして言語学習を行えるようになりました。人と向き合い学ぶ価値はあるのでしょうか。個別学習塾では「あの先生じゃないと授業を受けたくない、あの先生だったら授業を受ける」という人間起因の動機付けが生徒の中に生まれます。時にそれが授業の時間割作成の難易度を高めてしまうのですが、、、。ここで、「あのAIじゃないと授業を受けたくない、あのAIだったら授業を受ける」という動機づけは生じるのでしょうか。つまり、人間の心に影響を与えられるのは人間であるということです。突き詰めると理由が答えられなくなる、相性、好み。その人からしか得られない感情、絆。その関係性の中で交わされる言葉には頭だけでなく心に留まることのできる力が宿るのではないでしょうか。
中には小学生から高校卒業まで通室してくださる生徒さんもおられます。それは言い換えると、家族でもない、友達でもない、近所の人でもない、どこにも属さない関係を何年も継続する必要があるということです。時に、厳しい指導を受ける時、時に気分が乗らない時、時に辞めたくなる時、そんな状況でも向き合い続けるときに養われる力は何なのでしょうか。忍耐力、辛抱強さ、他者に自分を合わせる力、気遣いといった心を持つ人間にしか身につけられない能力です。一方、AIであれば自分の気分や都合だけを考えて学びを進めることが出来てしまいます。言語スキルは向上しても、心は養われるのでしょうか。
こくごネットでは「言葉で私らしさを、言葉で与えられる力を」を理念に指導を実施しています。この理念の背後には社会に出た時に人とつながり合える人になって欲しいという願いが込められています。そのためにはやはり、心が、いや心しか身につけられる能力を鍛える必要があります。だからこそ、人と向き合い学ぶ価値はあります。心と結びつく言葉は人間から出てきた言葉であり、人間との関係を経た言葉であると確信しているからです。
4.決意
上記の三つの確信を実現しようとすると次の条件を満たす必要があります。一対一の授業形式、人と向き合える人間力。これは学習塾をビジネスの観点から見るとマイナスの要因となります。なぜなら、一斉形式の授業ができず、多くの生徒を効率良く集められず教室規模を大きくできない、研修や教材だけでは埋められない講師間の質のバラツキを生み出してしまうからです。(属人化)。
そうであっても、今後も得られた確信に基づき次の三つにこだわり前進します。
1 寄り添い、発信まで貫徹する授業
2 反復、継続を引き起こす授業
3 言葉と心を結ぶマンツーマン授業


